ED勃起不全の治療

現在、成人男性の24%、つまり4人に1人が中等度以上のEDに悩んでおり、50~60代では2人に1人がEDという統計も出ています。

  • 「なかなか勃起しない」
  • 「最近、性行為に自信が持てない」
  • 「最後まで満足のいくような性交ができない」
  • 「たまに勃起しないことがある」

と感じていたらなるべく早くED治療をおこないましょう!

 EDとは「勃起機能の低下」を意味し、日本語で「勃起障害」あるいは「勃起不全」と訳されます。
完全に勃起ができない状態だけがEDではありません。
勃起に時間がかかったり、勃起しても途中で萎えてしまったりして、満足のいく性交ができない
・・・と感じる人は、いずれも EDの疑いがあります。

米国泌尿器学会では
性交時に十分な勃起やその維持ができずに、満足な性交が行えない状態
と定義されています。

当院では、このような男性を対象に男性不妊専門の外来を設けています。
この専門外来では、平成元年よりおこなっている不妊治療の経験から、一人一人の患者さんにあわせた治療方法を構築し、かつ患者さんの意向を治療方針に反映させています。


勃起の仕組み

勃起はなぜ起こるの?

勃起は、自律神経のうちリラックスする副交感神経が優位になると陰茎海綿体の血管が拡張し、血液が送り込まれることにより起こります。大きく膨らんだ状態が正常な勃起です。

もう少し詳しく説明します。

男性が中枢への性的な信号(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・想像)や陰部への触覚などが刺激となり、仙髄にある勃起中枢(S2-4)が興奮し、副交感神経である骨盤神経を介して陰茎海綿体の血管及び海綿体洞の平滑筋を弛緩させます。これらの平滑筋が弛緩すると海綿体洞に多量の血液が流入し、海綿体内の圧が上昇し、拡張した海綿体洞は白膜との間にある白膜下静脈が圧迫され、血液の流出が妨げられます。その結果、海綿体内圧は収縮期血圧近くまで上昇し、勃起が完成します。
一旦、勃起すると、海綿体を覆う白膜がパンパンに膨れた状態となり、静脈が圧迫されます。これによって陰茎の内圧が上がり、一度流れ込んだ血液が簡単に出て行くことなく、勃起が維持されます。

勃起には2種類のパターンがあり、大脳の興奮が脊髄の中枢神経に伝わる「中枢性勃起」と物理的な刺激による「反射性勃起」です。

勃起の種類

心理的な刺激による中枢性勃起

中枢性勃起では、女性の裸体を見たり想像をしたりするなど、視覚、聴覚、味覚、嗅覚、想像によって大脳が興奮し、その興奮が脊髄の勃起中枢(中枢神経)~勃起神経の骨盤内臓神経(副交感神経)に伝わって勃起が生じます。

物理的な刺激による反射性勃起

反射性勃起は、ペニスに触れたり、乗り物などで微妙な振動を受けたりするなど、物理的な刺激を受けることで陰部神経を介して反射的にペニスの「陰茎海綿体」が血液で満たされ、勃起が生じます。

EDの場合、動脈の拡がりが不十分で、十分な血液が動脈に流れ込まなかったり、勃起につながる神経のどこかにダメージを受けていて、硬くなるのに時間がかかったり、勃起が持続できなかったりします。

夜間勃起とは

健康な男性では、就寝中にも生理的な勃起が見られます。これは夜間勃起と呼ばれ、性的刺激とは関係のない勃起です。人は眠っている間、深い眠りの「ノンレム睡眠」と浅い眠りの「レム睡眠」を90分毎に繰り返しています。

健康な男性であれば夢をよく見る浅い眠りの「レム睡眠」のたびに特定の神経が刺激され勃起しています。通常、朝目覚める時には「レム睡眠」の時が多いので朝起きると勃起していることが多いのです。この状態が「朝立ち」ということです。

何故、眠っている間に勃起をするのか?
睡眠中は体の機能を回復するためにリラックスし副交感神経が優位になります。リラックスすることで疲れていた脳や身体が回復し、免疫力を高めたり、成長ホルモンを分泌させたりと抗老化の役目も担っています。つまり睡眠中は体のメンテナンス時間なのです。夜間勃起も副交感神経が優位の時に生じるので、男性の生殖器のメンテナンスに欠かせない生理現象であるとも言われています。

EDの種類

EDには、大きくわけると、

  1. 心因性ED(機能性ED)
  2. 器質性ED
  3. 混合性ED

の3つに分けられます。

心因性(機能性)ED

心因性EDは、過度の緊張、夫婦関係のズレ、失敗の記憶、ストレスなどが原因で、一番多いEDのパターンがこの心因性です。朝勃ちもあり自慰では勃起するが相手がいるとダメになるというのが心因性EDの典型的な特徴で、夫婦関係の気持ちのズレや仕事や家庭のストレス、子作りのためのプレッシャーなどが深く影響します。
このようなEDでセックスレスになっている夫婦も少なくないでしょう。

初回の性交の失敗体験を引きずっていたり、性交を長くしていなかったブランク後に失敗、今までは問題なかったが一度失敗してから急に不調続きになったというのもこれにあたります。

過度の緊張で勃たなかったり、性交中の中折れやコンドームをつけると萎えるなどがよくある症状で、精神的にEDになっているというのが実態です。定年後、仕事という大きなやり甲斐を失って起きたり男性更年期障害で性欲が減退して起きることもあります。

また、この心因性EDを細かく分けると2つに分けることができます。

現実心因

日常のちょっとしたことがストレスとなり、それが原因でEDを起こす場合です。例えば、 パートナーの女性に「だめな男ね」、「役立たずね」などと言われ、その言葉に敏感に反応し、言葉の衝撃や暴力でEDになったりします。また、結婚生活で奥さんとうまくいかない、経済的なストレスがある、毎日疲れている、など自分自身でほぼ原因に見当がつくものが現実心因です。

深層心因

日常生活には特に心理的ストレスはないものの、幼児期の体験や性的トラウマなど過去の出来事が原因となり、心の深層にある原因がEDを起こす場合です。深層心因の場合、大半は無意識ないし意識下の世界に原因があるため本人には見当がつかず、原因の解明までに長期間要し、治療が難しいケースが多いようです。

器質性ED

器質性EDは、脳出血、脳腫瘍、脳外傷、パーキンソン病、アルツハイマー病などの疾患は、自律神経障害を起こすEDや、糖尿病や高血圧、高脂血症などの生活習慣病が原因となり、血管や神経が障害を受けて起こるEDがあります。また、喫煙や過度の飲酒もEDを引き起こす原因と考えられています。

糖尿病ED 80.9%

糖尿病は血管や神経などに障害が起こるため、生活習慣病の中でもEDの起こる割合が最も高い疾患になります。

高血圧ED 66.7%

高血圧は動脈硬化を引き起こす原因の1つであるため、EDの起こる割合が高くなります。

高脂血症ED 64.7%

高脂血症は動脈硬化の原因であるため、EDの起こる割合が高くなります。

ED簡単診断

ここで、EDかどうか今の状況を把握してみましょう。
下の5つの質問に対して該当する項目にチェックしてください。

Q1.勃起して維持する自信の程度 1)非常に低い 2)低い 3)中くらい 4)高い 5)非常に高い
Q2.性的刺激によって勃起した時、挿入可能な硬さの頻度 0)性的刺激はなかった 1)ほとんど、又は全くならなかった 2)たまに(半分よりかなり低い) 3)時々(ほぼ半分) 4)しばしば(半分よりかなり高い) 5)ほぼいつも、又はいつもなった
Q3.性交時、挿入後に勃起を維持できる頻度 0)性交を試みなかった 1)ほとんど、又は全く維持できなかった 2)たまに維持(半分よりかなり低い) 3)時々維持(ほぼ半分) 4)しばしば維持(半分よりかなり高い) 5)ほぼいつも、又はいつも維持
Q4.性交を終了するまで勃起を維持する困難度 0)性交を試みなかった 1)極めて困難 2)とても困難 3)困難 4)やや困難 5)困難でなかった
Q5.性交を試みた時の満足度 0)性交を試みなかった 1)ほとんど、又は全く満足できなかった 2)たまに満足(半分よりかなり低い) 3)時々満足(ほぼ半分) 4)しばしば満足(半分よりかなり高い) 5)ほぼいつも、又はいつも満足
合 計 ______点
  1. EDなし:22-25点
  2. 軽度ED:17-21点
  3. 軽度ないし中等度ED:12-16点
  4. 中等度ED:8-11点
  5. 重症ED:5-7点
  6. ED疑い:1-4点

EDに対する鍼灸治療

EDの治療

EDに対する鍼灸治療は、EDの原因、症状の強さによって治療方法を変えていきます。また、現代医学的な鍼灸治療と、東洋医学的な鍼灸治療の2つのアプローチ方法を駆使します。

例えば、現代医学的な治療では、骨盤内の血流改善を目的とした治療、勃起中枢(S2-4)の神経ににほぼ直接アプローチするような治療があります。

EDの治療

一方、東洋医学的な治療としては、冷え性が特徴の腎虚という診断を基準に腰にあるツボ「腎兪」や、お腹にあるツボ「関元」などを使用します。
精神的ストレスが多い人には、頭のてっぺんにある「百会」というツボを使用したりします。

EDは、一時的な症状でしたら、1~数回の治療で回復しますが、ストレス、残業や夜勤が多い(不規則な生活)・糖尿病を患っている・不整脈など循環器の疾患を持っているなどの場合、根気よく治療することが必要となります。普段の生活を一度整理して、症状の原因となっているものに対して一つ一つ対応していきます。

近年では、バイアグラ、レビトラ、シアリス等のED治療薬の使用によって副作用である動悸に悩まされ、極力使用したくないという理由でED専門の鍼灸治療をおこなう患者さんが急増しています。