腰椎椎間板ヘルニア
腰椎椎間板ヘルニアとは
ヘルニアとは、正式には椎間板ヘルニアといい、腰や足にかけての症状がある場合、腰椎椎間板ヘルニアと呼びます。ここでは、主に腰のヘルニアについてご紹介します。
腰の部分には背骨(腰椎)が5つ積み木のように重なっていて、骨と骨の間には、クッションのような役割を果たしている椎間板といわれるものがあります。椎間板ヘルニアとは、本来あるべき位置から椎間板が飛び出して神経を圧迫し、腰や足に激しい痛みやしびれを引き起こす症状のことです。腰痛の方のうち、2~3割程度の方が腰椎椎間板ヘルニアを発症しているといわれています。
特に腰の椎間板は頭・胸・腕などの重みや重力を背負っている状態のため、症状が出やすいと言われます。
ヘルニアの発症には大きく2種類の原因があります。
ひとつは、激しいスポーツをしたり重い荷物を持ったことで、急激な痛みと共に発症する場合。
もうひとつの原因は、加齢とともに水分やハリが無くなり、そこに中腰体勢やデスクワークなどで圧力がかかることで壊れやすくなった椎間板が原因となり発症する場合です。一般的に、30歳を過ぎると筋肉などの組織が固くなり水分がなくなっていきます。
ヘルニアの原因
ヘルニアの人口は約1%、好発年齢は20~40代で比較的若い人に多い病気です。また、ヘルニアはあるけど、実際に症状が出ていないヘルニアは3人に1人といわれています。
腰や首に激痛が襲ってくるヘルニア。この病気は誰でも発症しうるもので、次のような人がヘルニアになりやすいといわれています。
ヘルニアの原因には次のようなものがあります。
- デスクワークなどで長時間同じ姿勢でいることが多い
- 運動不足で肥満気味 、喫煙、睡眠不足
- 普段から重い荷物を持ったり、運んでいる
- 過去に首や腰まわりに大きな打撲をしている
などがあります。
ヘルニアの症状
ヘルニアの症状は、多くの場合、腰痛があらわれ、その後、片側のお尻や大腿から下腿や足部にかけて電気の走るような痛みやしびれが加わってくることが多く、筋力低下がゆっくり起きる場合は、腰や足の痛みが軽くなってから膝折れやスリッパが脱げるなどの症状、さらに排尿・排便の感覚がわからなくなったりする場合もあります。
椎間板は中央にゼラチン状の髄核があり、髄核を取り囲むように線維輪があります。椎間板ヘルニアでは、この線維輪に亀裂が生じて、髄核が外に飛び出した状態を指します。
また、ヘルニアには大きく分けて突出型と脱出型のタイプに分類されます。
突出型は、髄核が線維輪から飛び出さないが、髄核が後方へ移動して神経の一部を圧迫するタイプです。
一方、脱出型は、椎間板が傷む事で線維輪に亀裂が入り、髄核が線維輪を突き破り神経を直接的に圧迫するタイプとなります。
ヘルニアの痛みの原因
ヘルニアは、所見で重度の状態であっても痛みがない場合や、反対に軽度のヘルニアでも強い痛みがあらわれる場合があり、説明不可能とされてきました。しかし、近年では、飛び出した髄核が炎症を起こす結果、近くにある神経に炎症が飛び火する事で痛みが発生する事が分かってきました。そして飛び出した髄核の炎症は一定期間(数か月)で自然消失する事も判明してきました。
ヘルニアは、炎症後に飛び出した髄核が自然に吸収されることもあれば残存することもあります。そして残存したヘルニアは、画像検査で重度のヘルニアとして見えるのですが、炎症後であるので症状はありません。
椎間板ヘルニアによる痛みは、脱出した髄核による物理的な神経圧迫ではなく、脱出した新鮮な髄核による炎症が原因です。
つまり数か月以上痛みが持続している人は、常に新しい髄核が漏れ続けている事を意味しており、反対に痛みが改善した人は、髄核の漏れが止まった状態を意味します。
外科的手術では漏れ出た髄核を摘出しますが、線維輪の亀裂を塞ぐ事が出来ないので、髄核が漏れ続け高い再発率の原因となっています。
ヘルニアの治療
ヘルニアの治療としては、髄核の飛び出し方によってちがいますが、初期の段階では2週間ほど安静にしていれば治っていきます。病院へ入院するのも極力体を起こさず、腰(椎間板)に負担をかけないためです。
治療としては、症状がひどい場合は手術が必要となります。一般的には鎮痛剤やブロック注射、温熱療法、低周波やレーザーなどの電気光線療法、マッケンジーなどの運動療法、そして鍼灸治療があります。
このような治療法のなかで、患者さんの負担や副作用がなく本当に痛い部分、悪い部分に対して直接治療をおこなえるのは鍼灸治療だけです。