花粉症
花粉症とはスギやヒノキなどの植物の花粉が原因となって、くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどといったアレルギー症状を発症する病気です。
1985年頃まではまれな病気とされていましたが、今や2人に1人は発症する国民病となっています。症状によっては集中力の低下や夜眠れないといった日常生活に与える影響など社会的損失も大きい病気です。
花粉症のメカニズム
くしゃみや鼻水、目の充血やかゆみといった症状はいずれも体内に入ってきた花粉を取り除こうとすることで生じるアレルギー反応です。花粉が身体の免疫機能により「異物=敵」と捉えることで、敵に対する抗体(IgE抗体)が作られます。
IgE抗体は花粉と接触するたびに作られるため体内に蓄積されていきます。
蓄積される量が許容量を超えてくると、次に花粉が入ってきたときにアレルギー反応を起こすヒスタミンなどの化学物質が分泌され、鼻水やくしゃみといった症状を起こします。
花粉症の増加要因と症状の悪化要因
花粉症患者の増加の要因として、飛散する花粉量の増加、食生活の変化、腸内細菌の変化や感染症の減少があると指摘されています。
最近の研究では花粉症の症状を悪化させる可能性として、空気中の汚染物質や喫煙、ストレスの影響、都市部における空気の乾燥が考えられています。
花粉症の重症度
花粉症の重症度は鼻をかむ回数とくしゃみをする回数、鼻づまりは口呼吸の回数で診断をおこないます。
くしゃみと鼻水は密接な関係にあるため「鼻水・くしゃみ型」、鼻づまりがほかの症状より多い場合は「鼻づまり型」、3つの症状が同様に多い場合は「充全型」に分類されます。
花粉症は重症でも命に関わることはありませんが、花粉症と食物アレルギーが合わさった口腔アレルギー症候群ではまれに全身に症状が現れるアナフィラキシー反応がでる場合があり医師による正確な診断・治療が必要です。
鼻アレルギー診療ガイドライン2020年版より
花粉症の治療
花粉症の治療は主に3つあります。
① 内服薬、鼻薬や点眼薬などによる薬物療法
抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、鼻噴霧用ステロイド薬が使われます。
② レーザー手術
薬を使っても効果が見られなかったとき、特に鼻詰まりが強いときにおこなわれます。
③ アレルゲン免疫療法
花粉症の原因となっている物質(アレルゲン)を少量ずつ身体に取り入れることで免疫を獲得することを目的とした治療法。治療自体は2~3年ほどかかりますが、根本的に治せる治療法として注目されています。これまでは注射でおこなっていましたが、最近は手軽な舌下免疫療法に関心が高まっています。
花粉症に対する鍼灸治療
東洋医学の考えでは、花粉症の発症には、患者さんがもともと持っている体質が大きな要素となります。
古代医学書には「キュウ鼻(きゅうび)」という言葉で記された疾患があり、その症状は「突然に鼻がムズムズし、くしゃみが止まらず鼻水が流れる」とあります。ですから、アレルギー性鼻炎というのはかなり昔からある病気で、それに対する治療法もかなりありました。このキュウ鼻といわれる疾患は、体質やその時の体調が悪いために、体に歪みが生じ、引き起こされると考えていました。そのため、体質を改善して症状を押さえようというのが、基本的な治療です。
鍼灸治療では人が本来持っている免疫力や自然治癒力を高めることで過剰なアレルギー反応を抑えることができます。また、自律神経を整える効果もあります。自律神経は正常に働いていると身体を守ってくれるものですが、不規則な生活やストレスなどにより自律神経が乱れることで花粉症の症状も悪化させてしまうことがあるため、鍼灸治療で自律神経のバランスを保つことが花粉症の症状を軽減させることにつながります。
花粉症のツボ:攅竹
眉毛内側の少しくぼんだところ、軽く押すとズーンと響きを感じます。
鼻水、鼻づまりだけでなく目のかゆみにも効果があります。
花粉症のツボ:孔最
孔最は、最も孔(穴)のあいている部分という意味があり、鼻などの呼吸器を通してくれる効果があります。孔最を刺激することで、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの症状が落ち着きやすくなります。