寝違え
朝起きると首が痛い!ほとんどの人が一度は経験したことがある首の寝違え。睡眠から目覚めたときに首の後ろや首から肩にかけて痛みが出ることを寝違えと呼びます。ひどいときは首が全く動かせず仕事や家事など日常生活に支障が出てしまうこともあります。
寝違えをそのうちよくなると放置していませんか?
実は早く改善するには鍼灸治療が有効です。
寝違えとは
寝違えは医学的な病名ではなく、正式には「急性疼痛性頸部拘縮」といいます。
不自然な姿勢で長時間寝たりすることで首や肩に無理な負担がかかり、筋肉や靭帯などに急性の炎症が起こって痛みや動かしにくいといった症状が現れると考えられています。
このように不自然な姿勢で寝てしまう原因としては、疲れやストレス、お酒の飲み過ぎにより寝返りを打つ回数が少なくなって首に負担がかかる姿勢が長く続いたり、寝る時の枕が合っていない、そもそも体が冷えやすい体質で寝返りを打たないことが理由にあげられます。また寝違えが起こりやすいのは、前日に手や腕を使いすぎていたり、普段から首や肩まわりの血行が悪くなっている時が多いようです。
寝違えの原因
朝起きてから首が痛くて動かすことができなくて病院でX線やCTなどの画像検査をしても、寝違えの原因である異常がみられないことがほとんどです。目覚めた後に痛みが生じるため睡眠時の筋肉の血流不足・疲労や頚椎椎間関節の関節包の炎症、首から脇にかけて伸びている腋下神経(えきかしんけい)が、寝ている間に圧迫されてしまったのもが原因ではないかと考えられています。
- 睡眠中の不自然な姿勢によって、一部の筋肉が圧迫され血流不足(虚血状態)が生じる。
- 疲れ果てての睡眠や飲酒後の睡眠で寝返りを打てずに長時間同じ姿勢になる。
- 睡眠中に体が冷えて血行が悪くなる。
- 前日の過度な労働やスポーツによる筋肉の疲労などで筋肉が持続的な攣縮(こむら返り)を起こし生じる。
- パソコンなどの事務仕事で頭を一定位置に長時間保持することで頸部の筋肉に負担が生じる。
- 枕の高さがあわず首の骨に負担がかかると、頸椎の後ろにある関節包や靭帯が炎症を引き起こす。
- 首から脇にかけて伸びている腋下神経が、寝ている間に圧迫される。
病院での検査と診断
比較的痛みが軽ければ、病院へ行かなくても時間経過とともに痛みが改善して、徐々に首を動かすことが可能になり2〜3日で自然と治っていくことが多いです。
痛みが強く整形外科を受診した場合は、X線やCT、MRIなどの画像検査が行われます。
痛みの原因が寝違いの場合、画像検査では異常がみられないことがほとんどで、日常生活に支障をきたすほどの痛みの場合は治るまでに1週間程度かかることもあります。症状が似た頚椎椎間板ヘルニア、頚椎症性神経根症、頚椎症性脊髄症、転移性脊椎腫瘍、脊髄腫瘍、強直性脊椎炎、関節リウマチなどの病気が、画像検査で発見されることもあります。
病院での治療
- 湿布の貼付:炎症を抑えて痛みを取る薬剤が含まれる。痛む部分に貼る。
- 鎮痛消炎薬や筋弛緩薬の内服:飲み薬で炎症を抑えたり、筋緊張を緩和する。
- 漢方薬の内服:こむら返りの治療で使う漢方薬。筋肉の痙攣の緩和に有効。
- 局所麻酔:痛い筋肉や筋膜に注射して痛みを軽減する。
発症直後は、安静を第一に痛む方向に首をなるべく動かさないこと。無理に首を動かす、風呂や飲酒、強めのストレッチやマッサージは炎症がひどくなり、よけいに痛みが増す場合があります。
寝違えに対する鍼灸治療
東洋医学には、寝違えを表す「落枕(らくちん)」という言葉があります。文字通り枕から頭が落ちて首を痛めるといった意味で、昔の人もよく寝違えを起こしていました。
東洋医学では無理な姿勢が寝違えを起こすきっかけの一つであるとともに、そもそもの原因としてカラダが寝違えを起こすようなバランスの崩れた状態とも考えます。
体はエネルギーである「気(き)」や栄養分である「血(けつ)」がしっかり巡ることでいつも養われています。そのうち特に「血」が何らかの理由で不足してしまうと、カラダのさまざまな部位が栄養不足の状態になってしまいます。首の筋肉や靭帯も例外ではなく、栄養が不足している状態では無理な姿勢をとるなどといった少しのことでも傷めやすくなっています。そのうえ冷えやすい夜や朝方はさらに血行も悪くなるため、弱った首が寝違えを起こしてしまうのです。
鍼灸治療では不足している血を補うこともできますし、血行が悪くなり筋肉や靭帯の状態が悪くなっているところに血を届けてくれます。
寝違えはじっとしていれば数日で良くなりますが、早く普段の日常生活を取り戻すなら鍼灸治療が効果的です。
手の甲側で人差し指と中指の骨が交わるところ
寝違えを表す「落枕」という言葉そのもののツボです。寝違えたときに使われる代表的なツボになります。まずはこのツボを使ってみましょう。
手を握ったときに小指の付け根にできるシワの先端
手から肩、首へとつながっているツボです。肩こりや寝違えに効果的です。こわばっている筋肉を緩めたり痛みを緩和してくれる作用があります。