メニエール病

めまいの症状があると、「メニエール病じゃないの」と友人から聞いたことはありませんか。
実は、めまいのうちメニエール病によるものは約20%であるのに対し、良性発作性頭位めまい症は約60%にものぼるといわれています。

メニエール病については、女性に多く発症し、はじめは低音障害型感音難聴、突発性難聴と診断されるケースも少なくありません。また、再発を繰り返し、どんどん悪化していく病気でもあります。そのため、患者さん一人ひとりと向き合い、二人三脚でこれからの治療、対策をおこなっていきます。メニエール病には鍼灸治療が最も効果的です。共にめまい、難聴を克服していきましょう。

当院では、日本耳鼻咽喉科学会日本小児耳鼻咽喉科学会日本めまい平衡医学会全日本鍼灸学会にも参加し、そこで得たものを治療の現場にフィードバックしております。

メニエール病とは

めまいといえばメニエール病と言われるほど有名ですが、めまいとは

  • グルグル回っているように感じる(回転性めまい)
  • フワフワしたところを歩いているように感じる
  • 頭がグラグラする

といった症状の総称で、めまいの種類や、それにともなってあらわれる症状によって病名も変わってきます。めまいの原因をしっかりと診断し、的確な治療をして楽になりましょう。

患者さんがメニエール病かなと思うときは、ほとんどがめまい症状しか出ていない時です。それはメニエール病ではありません。また、頭がフワフワする、ぼーっとして集中できないといっためまいもメニエール病とは違います。

それでは、メニエール病とはどんな病気でしょうか。

患者さんがメニエール病を疑わなければならない症状は、「めまい・耳鳴り・難聴」があらわれた時です。激しいめまいを繰り返しているときは要注意です。

症状と診断基準

メニエール病は、何の誘引もなく突然、回転性(ぐるぐる回る)めまいが起こり、めまいと同時に、あるいはめまいの少し前から、片耳に耳鳴りや耳の閉塞感、難聴が起こります。
めまいを繰り返す間隔は人によって違い、数日、数週間、数カ月、あるいは1年に1回などさまざまです。

激しいめまいは、普通30分くらいから数時間続き、めまいの軽快とともに耳鳴り、耳の閉塞感、難聴は軽くなったり消失したりします。しかし、めまいを何回も繰り返しているうちに、めまいがおさまっても耳鳴りや難聴は軽快しないようになります。
めまいが激しい時は、これらの症状以外にも吐き気、嘔吐、冷や汗、動悸などが起こることもよくあります。

メニエール病は「くり返す」エピソードがあって初めて診断できるため、十分な問診が必要です。めまいの診察では体のバランスを調べる検査や眼振検査をおこないます。聴覚症状に対しては耳内を観察し、聴力検査を行います。

症状がめまいのみでも、隠れた難聴がある場合を想定して聴力検査を行う必要があります。逆に聴覚症状のみでも、隠れためまいがないか眼振検査を行う場合があります。

聴力検査では、メニエール病に特徴的な難聴が認められます。特徴は、低音障害型(低い音が聞こえにくい)あるいは水平型で補充現象(音が響いて聞こえる)などが確認されます。
また、厚生省特定疾患研究班調査によると、メニエール病は女性に多く、発症年齢は30歳代後半から40歳代前半に最も多く発症しています。

メニエール病の特徴は

  • 繰り返すめまい発作
  • 耳鳴り
  • 難聴
  • 内リンパ水腫

ということがあげられます。

内リンパ水腫

内リンパ水腫は、内耳の中の内リンパ液が過剰になり、内耳が腫れた状態になることです。

内耳はカリウムに富んだ内リンパ液で充填された膜迷路と呼ばれる器官と、骨迷路と膜迷路の間を充填するナトリウムに富んだ外リンパに別れています。

メニエール病の本体である内リンパ水腫(膜迷路に内リンパ液が過剰に溜まり、膨らんだ状態である)の内圧上昇により内リンパと外リンパを隔てている膜が膨張し、ついには破裂し、カリウムに富んだ内リンパとナトリウムに富んだ外リンパが混合し、平衡や聴覚をつかさどっている感覚細胞が化学的刺激を受けること、あるいは物理的な刺激を受けることで、激しいめまいや聞こえの症状としてあらわれます。
内リンパと外リンパを隔てている膜は短時間で閉鎖しますが、再度内リンパ液が溜まるとまた膨張・破裂を繰り返し、めまいや聞こえの症状も繰り返すことになります。

感音性難聴

メニエール病:難聴の聴力水平型

メニエール病は、感音性難聴に属します。感音性難聴とは、耳にある鼓膜や中耳炎という病名にもなっている中耳(ちゅうじ)と呼ばれる部分よりも内側の障害に起因して聞こえなくなるものをいいます。

音は空気が振動し、耳の穴を通り鼓膜へぶつかってその振動が蝸牛(かぎゅう)と呼ばれる器官まで伝わります。蝸牛で空気の振動が電気信号に変換され、その電気信号が脳へ伝えられてはじめて音として認識されます。

この音の伝達過程の中で蝸牛より外側が障害され引き起こされる難聴を伝音性難聴、内側が障害され引き起こされる難聴を感音性難聴とそれぞれ呼んでいます。

感音性難聴の症状としては、難聴のほかに蝸牛の障害として補充現象という音が過剰に聞こえてしまう症状や、高音部分の聴力低下に伴う聞き間違いといった症状が出てきます。

一般的に感音性難聴を発症した場合、構造的な問題から伝音性難聴よりも症状は強く、回復しにくい傾向にあります。突発性難聴やメニエール病、ムンプス難聴などがこの難聴に分類されます。

めまいのツボ

メニエール病の治療

実際の治療では、めまいに至った原因を客観的に追求し、患者さん一人ひとりに最適な治療を行っていきます。
一般的な鍼灸治療としては耳の周囲にある「耳門(じもん)」、「聴宮(ちょうきゅう)」、「聴会(ちょうえ)」というツボを状態に合わせて使い分けることが多く、また、耳を含めた首から上の血流改善に効果がある「天柱(てんちゅう)」、「完骨(かんこつ)」といったツボも頻繁に使われます。

*患者さんの症状によっては腰や手、足にあるツボに治療を行うこともあります。

内関(ないかん)

内関は、手の平側で、手首のシワから指3本分上に位置するツボで、めまい、ストレスがたまった人、情緒不安定、うつ症状、不眠症、車酔い、あがり症などの症状のによく使われています。

内関を刺激することで、普段から精神安定をもたらし、冷静さを保てるようになります。また、百会と合わせて使用することで相乗効果がうまれます。

心配性な方、トラウマがフラッシュバックしてしまうような方には、普段からここに貼るタイプの鍼を使用することもあります。また、不安が強い方、寝つきが悪い方には、寝る前に自分で刺激するといいでしょう。